トレーサビリティ

今、Penelope Fitzgeraldの「The Bookshop」を読んでいます。
Forth Estateというロンドンにある出版社から出された本ですが、読んでいて気づいたことがあります。
それは、いやにインクの乗りが悪いなぁということと、紙質も今まで読んできたペーパーバックと違うということの2点。
そもそもペーパーバックに紙質など望むべくもありませんが、今までと違う。
スキャンして分かるように、不純物が多い。シワもある。

Bookshop
よくよく見ると、FSCのロゴとその横にMIXという文字がありました。

FSC
つまり、この本の紙はFSC(森林管理協議会)という国際的な森林管理の認証を行う協議会の認証を受けたものです。

FSCジャパンのホームページにある「ビジョンとミッション」には次のようなことが書かれています。

FSCは、将来世代の権利や需要を損なうことなく現在の世代の社会的、環境的、経済的な権利や需要を満たすことをビジョン(理念)とし、環境保全の点から見ても適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理を世界に広めることをミッション(使命)としています。
この「環境」、「社会」、「経済」のバランスはFSCの三本の柱でもあり、大きな特徴になっています。

ForestStewardship Council (森林管理協議会)のStewardshipは、一般的に管理を意味するマネージメント(Management)とは違います。Stewardには執事や給仕という意味がありますが、Stewardshipとは、所有者や支配者としてトップダウンで管理するのではなく、資源を預かるものとして責任をもって管理し、それにより仕える、奉仕するという意味が含まれます。ここには、我々人間は森林や自然の支配者ではなく、自然に仕え、その資源を預かり管理するものであるという哲学が表れています。

MIXは「FSCが認めている適格な原材料(FSC100%、FSCミックス、FSCリサイクル、FSC管理木材、回収原材料)が複数使用されている製品に付けられる」という定義で、FSC100%の材料が70%以上含まれていなければならない。どうもMIXは品質的にはあまりよくないようですが、ペーパーバックとしてはまったく問題ないと思います。

FSC認証を受けた紙や木材などの商品はトレース可能だそうです。つまり、どこの森林から産出されたのかが分かる。ペーパーバックにあるFSCのライセンス番号から得られるのは認証を受けた出版社の情報だけでした。(おそらくここから森林に辿りつけるのだと思いますが、現時点ではどうやって確認するのか分かりません)

Certificate

以前、シーフードワッチについて書きましたが、現代では環境破壊や健康被害につながる、トレースできない商品は消費者に受け入れられない状況になりつつあります。

チリ産の鮭

日本は「おもてなし」を世界に対して売りにしていますが、場合によっては過剰品質の安売り以外の何ものでもなく、タダ働きや長時間労働、精神的疲労といった職場環境の悪化をもたらす。
商品やサービスを生み出す人たちが働く職場環境もトレースできるようになれば、労働者も消費者も気持ちよく社会で生きていけると、ペーパーバックの紙を見て思った次第です。