「タンノイのエジンバラ」という小説を図書館で借りました。たまたま、スピーカーの名前にひかれて借りたのでした。長嶋有氏の作品は初めてです。
短編小説集で最後に「三十歳」という短編があります。
今、ちょうど区切りの時期なのでまとめておこうと考えました。
長嶋有氏の小説には、商品や楽曲、漫画など実名で登場します。
この短編にも「ドカベン」や「パルプ・フィクション」「セリヌンティウス」「ロンドンブーツ」「漂流教室」などなどが出てくる。
ところが「ラブプリズナー(愛の囚人)」が60年代の曲と主人公秋子が説明する場面で、「ん?そんな曲あったっけ?」とネットで調べてもない。
実在していない曲をわざわざ話の中に持ち込んでいる。
実はこの「愛の囚人」がこの短編の主題だと思っています。ラストシーンをMindMapにまとめてみました。まず小説を読んでから以下を見た方がいいかもしれません。
母親は同じ性の娘に自分を投影しやすいので、我慢している自分を娘にも同じように強いる。息子に投影することもあります。そんなことをしてはいけません、ちゃんとしなさい、あなたのためを思って言っているのよと。こどもはその禁止命令を一生背負うことになります。育ててくれたのだから感謝しないといけないという思いと、自分の内面を支配する母親の禁止命令に苦悩する。こどもも親も、まさに「愛の囚人」です。そんな関係性を考えさせてくれる小説です。